東京のナイト・アウトの輝きが示したファッションの終わり
ヴォーグ誌が主催する「ファッションズ・ナイト・アウト」(FNO)が今月5日の土曜日、東京・青山や表参道、渋谷界隈を中心に開かれた。世界的な経済・金融不安の中で落ち込むファッション消費を刺激するきっかけを作ることで、ひいては経済活動全般をも盛り上げられないか?そんな効果をねらって3年前にニューヨークで始まった年1回の企画だこの催しはヴォーグが発行されている世界18カ国の主要都市で9月に開かれるが、日本では今年3月の東日本大震災後のエネルギー問題などを考慮して11月の開催となったという。そういう事情もあったのか、今回はFNOの発案者である米ヴォーグ誌のアナ・ウインター編集長が来日、伊ヴォーグのフランカ・ソッツァーニ、仏ヴォーグのエマニュエル・アルトといった各国の編集長や雑誌スタッフらが東京に顔をそろえたそれだけではなく、世界の名だたるデザイナーも数多くこの日に合わせて来日していた,ドラゴンクエスト10 RMT。ディオール・オムのクリス・ヴァン・アッシュ、バーバリーのクリストファー・ベイリー、コスチューム・ナショナルのエンヨ・カパサ、そしてマイケル・コース、デレク・ラム、ロベルト・カヴァリ……といった具合。有力ブランドやメディアの経営陣の姿も少なからず見かけたそんなわけで、5日の表参道や青山通りはまるでパリ・コレ期間中のパリのような国際的にぎわいぶりで、買い物客の人出も多かった。企画に参加したショップは400店を超え、それぞれ客にシャンパンやスナックをふるまい、店内でミニライブやトークショーなどが開かれた。震災の復興支援チャリティー企画も多く、ルイ・ヴィトンの表参道店では英国人写真家マイルス・アルドリッジがモデル冨永愛を京都で撮りおろした、日本の美しさを改めて世界に伝える写真展(21日まで)のテープカットが行われたこの日だけの特別限定商品を販売したり、5~10%の割引をしたりした店もあった。おかげで、最近は見ていて心配になるほど閑散としていた店にも、いつもとは違う人数の多さや、ショップのスタッフの楽しげな姿も目立った,rmt。何だか久しぶりに見る買う楽しさ、売る楽しさといってよいだろう通りはいつもより華やいでいて、見ているだけで楽しかったし、確かに店の売り上げもいつもよりずっと多かったようだ。だからこの催しの意図には賛成したいし、アナ・ウインターら各国から駆け付けた編集長たちの善意も素直に認めたいと思う。しかし、この日のにぎわいで感じたのは、それがカゲロウのようなエフェメラルな輝きだったこと。また、そのにぎわいは地域の生活に根付いた祝祭というようなものでは決してなかったことだそしてその輝きは、もう終わってしまった楽しみの過去からのよみがえりでしかないという印象をぬぐえなかった。そう思った理由はもう一つある。それは、このナイト・アウトの企画そのものに、これまでのパリや市場としてのアメリカを中心としてきたいわゆるトップファッションがいつもそうだった、「上から目線」を感じてしまうことだったこれはヴォーグの個々の人たちに責めを帰する訳ではない。トップファッションはこれまでずっと、才能あるデザイナーたちが生み出す作品を上から目線で次々と発表してそれを量産し、消費を刺激して成長を続けてきた。まるでマーケットは無限に成長し続けることを前提としたようなファッション産業のシステムの中で、ヴォーグはメディア装置としての中心的な役割を担ってきたからだ。資源と環境が現代の産業社会についに限界を示してしまった今、そうした「上から目線」のファッションシステムもすでに過去のものとして終わろうとしているのだナイト・アウトのシャンパンの泡のような一瞬の輝きは、それだからこそ貴重な「滅びの美学」のようなものだったのかもしれない。とはいえ、それはファッションそのものが終わってしまうことを意味するわけではない。未来につながっていくような新しいファッションがあるとすれば、それは今の足元をよく見つめたような、地域的でもっと日常的でほっとするような、みんなで楽しめるような……。そんな服をナイト・アウトの煌きとは逆に連想してしまうのだが。
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